今回のテーマは、性
日本ではどこか避けられている「性」のはなし。
以前にも記事を書いたのですが、今回はもう少し深く書いてみたいと思います。
というのも、今回、縁あって「福祉大国」と言われるスウェーデンに住む方に、現地の性教育について話しを聞く機会を頂けました。
普段は敢えて考えないようにしている「性」について、向き合う機会になればいいなと思います。
今回は、包み隠さず書いていきますので、「性」のワードに抵抗のある方、精神的に辛い方は閲覧をお控え下さい。
インタビューは、2ページ目以降です。
生命の誕生
突然ですが、みなさん。
自分が子供だった時に、こんなことを考えたことはありませんか?
どうしてママのお腹で
赤ちゃんが育つの?
人はどうやって
生まれてくるの?
そして、立派な大人になった皆さん。
自分の子供に、同じように質問された経験はありませんか?
「コウノトリさんが運んできてくれるのよ」と答える親は少ないでしょう。
かといって性行為について説明する親も…まずいないでしょう。
考えた結果、
今はわからなくて大丈夫!
その内わかるから!
なんてはぐらかしてはいませんか?
私は、したことがあります。
子供から投げかけられる性に関する質問に、多くの大人がどう答えたらいいのか戸惑っているのではないかと思います。
でも、落ち着いて考えてみて欲しいのです。
子供は、なにも「エッチなこと」に興味を示しているわけでも、「エッチな話」を聞きたいわけでもない。
妊娠の仕組みを知らない子供からすれば、生命の誕生は謎だらけです。
きっと「わからないから質問した」それだけのこと。
妊娠を含め、性に関わる多くの事柄を、「エッチなこと」にして、難しくしてしまっているのは私たち大人なのかもしれません。
誤った認識
私が子供だった当時は、初経を迎えてお赤飯が炊かれていた家庭もあったと思います。(私はされていませんが)
生理が始まり戸惑っているであろう子供の気持ちを置き去りにし、家族で祝うという風習は今から考えるとゾッとするものがあります。
そして当時は、学校で「生理」の話をする時、男子は別室に移動させられていたように記憶しています。
きっと30代以降の男性で、生理について正しく理解している方も少ないのではないでしょうか。
中には、生理は「射精」と同じような性欲求的な反応で、自らの意志でコントロールできるものだと勘違いしている方もいると聞きます。
少し前に、X(Twitter)で、産婦人科の内診台について誤った表現をして大炎上したことも記憶に新しいですね。
振り返ってみれば、先生や親などの信頼できる大人から、「性」について深く学んだことがない私たち。
子供を性被害から守ろう
自分の体を大切にしよう
と社会で唱えたところで、身を守るために必要な知識や情報を、子供たちに確実に伝えていける大人が今の日本にはどれだけいるでしょうか。
人は経験のないことについて語ったり教えたりするのは難しいものです。
性教育に関しては、子供たちに教えるのはもちろんのこと、私たち大人も学び直す必要があるのではないかと感じます。
話しにくい環境
生理や射精が始まった子供に対して
なんて声をかけたらいい…?
他の家ではどう対処をしてる?
そう悩んだり、誰かに相談したいと思う親は多いと思います。
と同時に、子供もまた、
生理や射精が始まったことに対して
親になんて話そう…
恥ずかしい!
誰にもバレたくない。
そんな風に、自分の体の変化に一人思い悩んでいるのではないかと思うのです。
多くの人が戸惑い、悩むことなのに、今の日本には気軽に相談できる場所がありません。
正確には、「話しにくい雰囲気がある」という方が正しいかもしれません。
なんとなく話しちゃいけない気がする…という感じがありませんか?
普段から「性」に関して話すことがないので、いざという時に誰にどうやって話していいかわからないのだと思います。
他人はもちろんのこと、家族でも、夫婦間でも話せない。
学校の先生にも相談しにくい。
この話しにくい状況に、私は疑問に感じています。
娘も来年10歳。
体つきも女性らしくなり、生理も近いうちに始まるでしょう。
生理のことや、体型の変化に伴う下着の選び方などを誰かに聞きたいと思ったのですが、誰にどう相談すればいいのか、そもそも他人に話していいものなのかもわからず、相談できずにいました。
そんな時、娘と同じ療育に通うお母さんと近況を喋っていた時にたまたまそういう話になったので、「実は…」と切り出してみたところ、娘さんが初潮を迎えた時ことを聞かせてもらうことが出来ました。
何十年も付き合っている自分の生理と、子供の生理は全く別物。
インターネットの情報ではなく、実体験を聞けて本当に参考になりました。
女の子にとって
生理が始まるということは
「妊娠出来る体になる」
ということ。
男の子にとって
精通するということは、
「妊娠させることが出来る体になる」
ということ。
身体の成長は素晴らしいことですが、それと同時に、大きな責任を伴うことや、自分と相手の体を守るために必要なことも学ばなければいけません。
生理や射精は、ごく普通の体の働き。
でも、なぜか「エッチなこと」と同類の「性」として一括りに捉えられてしまっていて、話をする機会がほとんどないのが今の日本。
人前で話してもいい「性のはなし」と、個人で楽しむべき「性のはなし」を分けて考えて、教育上必要なことは、もっと一般的に情報交換が出来るようになればいいなと思います。
現在の性教育
現代の授業では「性」をどう扱っているのでしょうか。
今回の記事を書くために調べる中で知ったことですが、日本の教育は、「性」について深く教えたくても簡単には教えられない状況にあるようです。
それが
はどめ規定
この「はどめ規定」により、授業では性行為(セックス)は扱わないとされているのです。
性行為について教えることが禁止されているわけではありませんが、これといった手引きがあるわけでもなく、教える側(学校)としても、どう教えたら良いかわからず頭を悩ませる部分だと思います。
過去、はどめ規定を超えた性教育をした教師や学校に対し、保護者や地域だけではなく、国会からも厳しい批判があったことで、より「性」に関して踏み込みにくい状況があるのだと思います。
その結果、「問題になったら困るのでやらないでおこう」という心理が働き、教えることも、学ぶこともないまま月日が過ぎていくのが現状ではないかと思います。
「性」がテーマの授業例
・小学5年生/理科
「受精卵が胎内で成長する過程」
・中学1年生/保健体育
「妊娠・受精の仕組み」
・高校2年生/保健体育
「妊娠出産と健康」「人工妊娠中絶」
などがあるそうです。(他にもあると思います)
しかし、基本的にはいずれの授業でも、
「受精・妊娠に至る過程=性行為」そのものについて触れられることはないそうです。
中学生・高校生にもなって性行為を隠すことの方が無理がある気がしますので、中学生以降であれば、むしろ良いタイミングではないかと思うのは私だけでしょうか…?
中学生(思春期)くらいになると、親との会話が減ったり、心の距離が空きやすい時期。
それと同時に、様々な世界に興味が出て、行動範囲が広がる時期でもあります。
セックスをしたら体の中でどんなことが起こるのか、
興味本位で行うセックスにどれだけの責任が伴うのか、
「知らなかった」では済まされないこともあるということを、全ての子供に伝えていく必要があるのではないかと私は思います。
体を守るということ
では、学校以外でどのようにしてセックスの知識を得ていくのか。
それは、アダルトビデオや性雑誌、インターネットなどではないでしょうか。
大人もどこかで「その内、自分で調べて知るだろう」と思っているところがありませんか?
一人ひとり、どんな情報にアクセスするかわからないのに、
どの人も、正しい情報にアクセスできるとも限らないのに、
本当にその認識でいいのでしょうか?
大丈夫!我が子は
正しい知識を持っているよ!
そう自信を持って言えますか?
実際、私たちが若い頃も、こんな風に考えていませんでしたか?
セックスを経験した友人から
コンドームは付けない時もあるけど、いつも生理きてるよ
彼女に「付けて」って言われなかったら付けない
そんな話を聞いて、「そういうもんか…」なんて思い込んでいるかもしれません。
コンドームを付けずにセックスをすれば、「最後は外に出した」とか、「最後はコンドームを付けた」とか、そんなことはもはや関係ありません。
妊娠するか、しないか、それだけ。
しかも、限りなく妊娠する可能性が高くなる。
次の生理がくるまで、不安を抱えたまま生活しなくてはいけないのです。
もちろん、コンドームをしていても妊娠の可能性はあります。
それでも、リスクを減らすことは出来ます。
ドラッグを服用した際のリスクを説明するのと同じように、セックスによるリスクや背負うことになる社会的責任も同様に伝えていくべきではないかと思います。
そして、一般的な性のコンテンツに絶対的に欠けていることがあります。
それは
「性欲求をコントロールする方法」と「性行為の断り方」です。
アダルトビデオや性雑誌では、自分の欲求を満たすための知識しか得られません。
性欲求を満たすために作られたコンテンツでは、女性が拒否する姿さえプラスに捉えられてしまいます。
また、「断ったら嫌われちゃうかな?」とか、「申し訳ないな…」という気持ちから、本当はしたくないのに受け入れてしまう人も多いと思います。
でもそれで傷つくのは結局自分自身なのです。
男性・女性どちらも、自分を守るために「No」を言っていいんです。
そして、相手の「No」を尊重し受け入れることも大切なことだと知って欲しいなと思います。
避妊の方法
日本で一般的な避妊と言えば、コンドームとピル。
しかし、ピルは病院へ行かなければ処方されませんので、実際のところ、コンドーム一択のような状況だとも感じます。
でも、「コンドーム」は、男性の協力がなければ叶わない避妊方法です。
避妊するかどうかの最終的な決定権が、男性に委ねられてしまっている。
つまり、女性が自らの意志で選択・実行できる避妊方法ではない。
コンドームを付けて欲しいと言えない状況のこともあるでしょう。
自分の体を大切にしよう
そう社会では唱えられていても、実は、コンドームが一般的な避妊方法である日本では、
女性が自ら身を守る術がそもそも提示されていない、容易に選択できない状況なのではないか、とも感じました。
故に、男性側の快楽だけのために、コンドームの装着を拒否することはあってはならないこと。
しかし、どこかコンドームを付けるのはかっこ悪いとか、ダサいとか、ない方が気持ちいい、みたいな風潮があるように思います。
コンドームを付けないセックスを許すかどうかで、愛情の深さを確認しているようなところもあるように思います。
コンドームを正しく使用できることは、恥ずかしくも、かっこ悪くもなく、むしろマナーのある大人である証拠ではないでしょうか。
誰の責任?
近年、生まれたばかりの赤ちゃんが用水路やトイレに遺棄される事件が多く見られています。
こうしたニュースが報道されると、
捨てるぐらいなら妊娠するな!
誰かに相談すればよかったのに…
トイレで産むなんて最低
そんな言葉がよく聞かれます。
SNSでも見かけた人もいるでしょう。
でも、考えてみて下さい。
そもそも、「望まない妊娠を防ぐためにはどうすれば良いか」を私たち大人は子供たちに教えてきたでしょうか。
望まない妊娠をしてしまった時、「どこの誰に相談すれば適切なアドバイスをもらえるのか」を伝えてきたでしょうか。
一人で痛みや苦しみに耐え、悩み、不安な日々を過ごすことがないよう、安心できる環境をきちんと提供してきたでしょうか?
答えは「いいえ」だと思います。
もちろん、セックスをした本人たちにも認識の甘さはあるでしょう。
しかし、子供たちに必要な情報を与えてこなかった私たち大人にも原因があるように思います。
「セックスやピルについて教えれば、安易なセックスや中絶に繋がり兼ねない…」という、良かれと思っての行動だったかもしれません。
「はどめ規定を超えた授業をして批判されたらどうしよう…」という不安から、苦慮の末、教えることをやめた学校もあるかもしれません。
でも、そのどちらも、「教えなくていい理由」を私たち大人が都合よく作り上げているだけではないでしょうか。
そして、それが原因で、子供たちを危険に晒しているかもしれない、ということに気づくべきなのではないでしょうか。
男性の性被害
「性被害」はなにも女性だけのものではありません。
記憶に新しい某大手芸能事務所の事件は、男性の性被害が社会に認知されるきっかけになったと思います。
スウェーデンでは、メンズクリニックが広く認知されていて、男性も性について相談できるそうです。
日本では男性が「性」について、ましてや、「性被害」について相談できる場は、限りなく少ないでしょう。
男性の性被害に関しては、日本ではこれまでほとんど触れられてこなかったと思います。
早急に、男性の性被害者を救済する体制を整えていく必要があるだろうと感じます。
防災の観点
災害大国日本。
過去の災害発生時にも、避難所での性被害が問題となりましたが、避難所での生理用ナプキンの配布も大きな課題だと思います。
災害用の備蓄として、生理用ナプキンが完備されている自治体はどれだけあるでしょうか。
生理は一度始まってしまえば、一週間ほどは勝手に経血が排出され続けます。
経血の量も、期間も、自分でコントロールできるものではありません。
経血のついた下着のままで過ごし、不衛生な状況になれば、肌トラブルや細菌の増殖で病気になる可能性もあります。
今後は、首都直下地震や南海トラフ地震の懸念もあります。
それでなくても、近年は避難を要する豪雨災害の増加も顕著です。
女性の生理への理解、そして、具体的な備えや現実的な対策を講じることが求められていると思います。
また、防災担当は主に男性が担うことが多いとされますが、男性職員に生理用ナプキンの支給を求めるのは女性には抵抗がありますので、女性の担当者も配置することが望ましいとも思います。
「性被害」の範囲
みなさんは、「性被害」と聞いて、どんなものを想像しますか?
おそらく、夜道で襲われるような暴力的な行為や、DV、子供の体を触られたり写真を撮られたり…
そういったものを想像する方が多いと思います。
内閣府によると、「同意のない性的な行為は、性暴力」と記載があります。
そりゃそうです。当たり前ですね。
性犯罪・性暴力とは
あなたのからだとこころは、あなた自身のものです。
いつ、どこで、だれと、どのような性的な関係を持つかは、あなたが決めることができます。同意のない性的な行為は、性暴力であり、重大な人権侵害です。
性暴力は、年齢、性別にかかわらず起こります。
また、身近な人や夫婦・恋人の間でも起こります。相手と対等な関係でなかったり、断れない状況であったり、はっきり嫌だと言えない状況で性的な行為があっても、それは本当の同意があったことにはなりません。
性犯罪・性暴力とは | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
また、一つの行為に同意をしていても、他の行為にも同意したことにはなりません。
同意のない性的な行為は、犯罪となる場合もあります。
確実に、性被害を取り締まる法律も、性被害者を守る制度も充実はしてきているようですが、現実はなかなか厳しい。
いくら本人が性暴力を受けたと感じても、それを立証できなければ被害として認められず泣き寝入りするしかない。
ましてや、立証するためには、当時の嫌な思い出を振り返らなければならず、相当な精神的苦痛を伴います。
そもそも、被害届をだすことすら叶わないことも多いと思います。
結局、“逃げ得”になっているのが現実だと思います。
性被害であると立証する過程や、立証できる条件の更なる見直しや緩和が必要なのではないかと感じます。
スウェーデンでの「性被害」とは
では、スウェーデンでは「性被害」はどのように定義されているのでしょうか。
性教育が広く一般的になされているスウェーデンですが、
世界で最もレイプ/性虐待が多い国
という、一見すると矛盾しているような、相反するようなデータが存在しています。
今回、インタビューに協力してくれた方によると、これは「性被害」の範囲が非常に広く捉えられていることが理由にあるからだそうです。
スウェーデンは、結婚生活におけるレイプ/性的虐待が違法となった世界で最初の国。
あらゆる種類の性虐待の被害者を支援しようとした結果、より多くの女性が虐待をあえて報告したことからこのようなデータになっているとのこと。
そして、これらの虐待報告の中には、暴力行為を含まない内容も多く含まれているそうです。
暴力じゃない性的虐待って
どんなもの?
例えば、日本では、先に述べたように、暴力行為や抵抗できない状況でのセックスの強要などの「事件性」が重視され、「言葉だけ」で性被害に遭ったと第三者に認めてもらうことは難しいし、
夫婦間なら尚更、性の問題があっても暴力行為がなければ被害届けを出す方はほとんどいないでしょう。
しかし、スウェーデンでは、夫婦やパートナー間でセックスをしつこく求め続ける行為でさえもレイプとみなされるのだそうです。
つまり、パートナーが「ノー」と言ったのに、「イエス」と言うまでセックスを求め続ける…これだけでも性被害が成立します。
性差別的な発言でも同じです。
もはや、暴力的だとか、セックスをしたかなんて関係ない。
男性・女性どちらも、被害者にも加害者にもなり得るのがスウェーデンなのだそうです。
一言で「性被害」と言っても、国が違えば、これだけ捉え方も扱い方も違います。
私が、今回この話をしたのは、日本もスウェーデンのようにして欲しいということではなく、こういったランキング形式の数字だけを見て判断することはしないで欲しいなと思ったからです。
日本は性被害が少ない。
安全だね!良かった!
と考えていては、更なる性被害の拡大や対策の遅れを招いてしまうのではないかと感じました。
次のページから、スウェーデンに住む方のインタビューを掲載しています。
ぜひご覧ください。
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