※この記事は、過去記事のリライト版です。
今回は、ダブルケアだからこそ感じる、介護保険制度と子育て支援制度のこうだったらいいなぁと思う点について少し書いてみようと思います。
これから書くことは、絵に描いた餅のようなことかもしれません。
人手不足、財政難、様々なしがらみや課題があるのはわかっています。
でもそれを考えると何も話せないので、それら障害がなにもなかったとしたらどうあって欲しいか、で考えてみようと思います。
先に終わるのはどっち?
【育児には終わりがある】とはよく言いますが、成人するまでと考えても18年、大学卒業と考えれば20年以上向き合った後の話。
では、【終わりが見えない】と言われる介護はどのくらい向き合うのでしょうか?
過去の調査では、平均61.1カ月(5年1カ月)との結果が出ています。
介護は出来ない事が増えていくことに対し、子供は成長と共に出来ることが増えていくため単純に比較できるわけではありませんが、「ケアが必要な期間」と捉えれば、育児の方がよっぽど終わりが見えないと私は思います。
更に、介護期間中は、介護保険制度を利用することにより、様々な支援を受けることも可能です。
プロの力を堂々と借りることが出来ます。
しかし、育児には似たような制度は全くない、もしくはあっても探すのも依頼するのも自分、費用も全額実費であることがほとんどです。
誰かに頼んで自分の時間を取れば、母親としてどうなの…??と咎められることさえあります。
保育園や幼稚園に入園する3歳までは、お金がなければ気軽に支援を頼むことが出来ないのが今の日本の子育て。
これでは、本当に支援が必要な人に必要な支援を届けることが出来ていないのではと感じています。
介護にあって、子育てにない
介護サービスを利用していると、介護サービスの育児版がなぜないのだろうか?と思うことがあります。
母は、訪問看護と訪問診療・デイサービス・ショートステイ・訪問リハビリ、などを利用しています。
これが、子育てでもあったらどれだけ安心して子育てが出来たかな…と思うのです。
母親なら、だれでも・いつでも・障害の有無関係なく気軽に利用できる制度やサービスがあったら嬉しいなと思います。
ケアマネージャー
赤ちゃんが生まれると、出生届の提出と共に情報が共有され、保健師さんが自宅へ訪問してきますよね?
でもそれって、一度だけで終わりませんか?(少なくともうちの自治体はそう)
これ、なんで一度で終わりなんでしょう…
介護で言う、ケアマネージャーのように例えば3歳までは担当制にして、一定間隔で定期的に訪問するとかにはできないのでしょうか。
1年毎の定期健診では、子供も慣れない場所で泣いてしまったり機嫌が悪くなって、ゆっくり相談することも難しいです。
また、保健師さんも健診ごとに違う人なので、一から話さないといけなかったり、保健師さんごとに考え方が違っていたりもして、正直、あまり落ち着いて本音を話せる環境ではありません。
その点、継続して見てくれている保健師さんが自宅に来てくれるのであれば、話せることもあるんじゃないかなと思います。
訪問診療・訪問看護
発熱したり風邪引くと、泣き叫ぶ赤ちゃんを抱っこし、大きな荷物と共に病院へ連れていかなければなりません。
未就学、未就園の子供が複数人いれば更に大変です。
夜間の急な体調不良で、救急に連れて行けば、『これくらいで慌てちゃダメだよ。お母さん、もっとしっかりしなくちゃ!』なんて医師から言われた日には、母親のメンタルはズタボロです。
慌てれば『これぐらいで…』と言われ、それならと家で様子を見て悪化すれば『なんでもっと早く連れてこなかったの!?』と言われる。
私はどうすればよかったの?どうして批判するの?誰も何も教えてくれないじゃん!!と思うことも多々ありました。
こんな時に、介護サービスの訪問看護や訪問診療のように、ここへ電話すれば担当保健師や担当看護師と話せたり、自宅に訪問してくれたらどれだけ安心できるか…と思うのです。
デイサービス
保育所とは別に、働いていなくても、赤ちゃんを日中預かってもらえるシステムがあったら嬉しいです。
2週間に1回、1ヵ月に1回でもいい。
朝にお迎えに来てくれて、ミルクや離乳食・お風呂・遊ばせて、午後や夕方のお昼寝の時間に自宅にそっと戻してくれる。
預けている間、母親は休息の時間。
自由に動けるのです。
保育園の一時保育はどこも事前の面談や手続きが必要で、空きも見つからず、今使いたい!という時に利用するにはハードルが高いように思います。
ショートステイ(レスパイト)
一晩でいいから
ぐっすり眠らせて…!!
と思う母親は多いと思います。
父親が変わりにみればいいじゃないか、で見てくれる父親ならいいのです。
でも、家庭環境は様々です。
単身赴任で不在だったり、出張が多かったり、夜勤だったり、父親側にも都合があります。
核家族化が当たり前になった現代で、育児の全てを家庭内だけでカバーすることは難しく、結果的に母親への負担が増していきます。
もちろん、ネグレクトや故意での育児放棄などに利用されないための整備は必要と思いますが、僅かな時間でも母子が離れて過ごすことで救われる人がいるのではないか、とも思うのです。
訪問介護・生活支援
いわゆる家政婦さんとかベビーシッターを、行政の制度として利用できないでしょうか?
赤ちゃんや複数の子供を連れての買い物は大変なのは、経験者なら想像できますよね。
また、ようやく赤ちゃんが布団で寝たと思っても、その間に、食事の準備や掃除洗濯をしなければならず、母親の休憩時間はそう簡単に取れません。
トイレもやっと。
食事はパンなどの軽食で済ませることも多く、キッチンで立って食べる。
ふぅ~っと一息つく頃に、赤ちゃんが泣きだして再び抱っこ再開。
こんな時、掃除・洗濯・食事作り・買い物などの家事をヘルパーさんに気軽に依頼できたら助かるし、
栄養バランスの整ったお弁当宅配とかあったら栄養も偏らずにいいな…と思います。
今だと、自分でネットで家事代行サービス等を探すしかないし、
金銭的な面も考えると、決して気軽に利用できるものではありません。
また、地域差が大きく、田舎ではそもそもそういった企業が見つからないことも多いです。
だからこそ、行政としてその地域で暮らす人たちに、手を差し伸べてほしいなと思うのです。
子育て支援なので、赤ちゃんに焦点を当てた支援内容なのは必要ですし、理解もできます。
ただ、プラスαで、母親への現実的な支援をもう少し含んでもらえたら、より母親が子育てに心穏やかに向き合えるようにも思います。
子育てにあって、介護にない
母親/父親学級
妊娠中には、母親学級・父親学級などと呼ばれる出産や育児の知識を学ぶ時間が必ずあります。
私も娘の妊娠中に参加して、なかなかインパクトのある映像を見たのですが、未だに頭から離れないです。
でも、それだけ印象に残りやすいし、心の準備をして出産に臨むことが出来ます。
これを、介護に応用できないでしょうか?
介護が始まる前に、オムツ替えの練習やビデオを見れたり。
とろみ付きの食事の作り方やレシピを教えてもらったり。
認知症の進行例を知れたり。
声のかけ方についてアドバイスをもらったり。
相談窓口や金銭的支援の案内があったり。
コロナの流行も相まってか、在宅介護を選択する方が増えていると聞きます。
少しでも、安心して自宅へ迎え入れることが出来るように、介護が始まる前に知識を付けたり、相談出来る人と繋がれる場があったらいいなと思います。
手当て
子供一人につき毎月5,000円などの手当てがあるように、介護を担う家庭への金銭的な支援があったらいいなと思います。
コロナ以降、自宅で過ごす時間が圧倒的に増えたり、感染対策などで、何かと介護者への負担が大きくなっています。
介護職や医療職の方と同じように、自宅で家族の介護や看護をしている人にも何か救いの手があったらな…と思ってしまうのは、わがままでしょうか…?
妊娠・出産を諦める
介護が始まっている状態での妊娠・出産にはクリアしなければいけない問題がたくさんあり、それを考えるくらいなら…と最初から妊娠を諦めるケースもあります。
既にダブルケアの状態で、2人目・3人目を望む場合は、1人目よりも更にハードルが上がります。
母体に負担のかからない介護のカタチを実現できるか、
そして、いかに周囲が母子をサポートできるかが鍵だと思います。
〈現状と同程度のサポート〉
ではなく、
〈現状より多くのサポート〉
で、母子を支える覚悟が周囲に必要です。
妊娠中、母親は、お腹にいる赤ちゃんのことを最優先に考えられる環境が理想です。
母体と赤ちゃんのことを考えれば、介護が必要な高齢者や、今いる子供たちの面倒を一手に引き受けられる体制がなければいけません。
育児や介護、家事をいつでも任せられる人や場所がなければ、おそらくは母親側が2人目・3人目を諦める判断をすることが多いのではないかと思います。
介護サービスの利用頻度を増やせばその分、自己負担が増えてしまう。
ただでさえ出産でお金がかかります。
金銭的に余裕がないとそれすらも難しいでしょう。
それに、いくら日中の介護サービスを増やしても、夜間のお世話はどうしても家族がやらねばなりません。
しっかり寝てくれる高齢者であればいいですが、トイレ介助が必要な場合もあれば、認知症で昼夜逆転していたり、夜中に起きて物音を立てることもあるでしょう。
その音で子供も起きてしまい、赤ちゃんをあやしながら親の介護をする、そんな壮絶な夜を過ごすことになるのです。
ただでさえ少ない母親の睡眠時間をさらに削って介護をすることは、出産後の心身の休息どころか、休息時間を削って体に鞭打って動くことになってしまいます。
故に、単に介護サービスの利用頻度を増やせば解決するというものでもないのです。
それならこれを機に施設に入所したとしても、決して介護が終わるわけではありません。
掃除・洗濯・通院介助が必要だったり、あれを持ってきて欲しいとなにかと呼ばれて頻繁に通うこともあります。
その時に、小さな子供がいる状態で施設へ通うことはとても大変です。
施設へ入所したとしても、細々した作業は周囲が積極的に関わっていく必要があると思います。
何も言われないから
大丈夫だろう
なんだかんだ
うまくやってるだろう
という勝手な思い込みや、
外野の立場でいるのではなく、
家族全員が当事者であり、家族全員がケアラーとしての意識を持つことが大切だと思います。
相談窓口
困ったことがあったら
いつでも相談して下さい
と市役所などに相談窓口は設置されていますが、実際に相談しに行った人ってそんなにいないのでは?と思います。
勇気を出して相談に行っても「大変だね」「無理しないでね」と言われて終わってしまったということをよく聞きます。
これは、悩みのレベルと相談窓口の役割が一致していないケースだろうなと思います。
悩みには、人と話せばスッキリするというものと、具体的な外部の介入が必要なものがあると思います。
前者は、こういった窓口で話すことで悩みの複雑化、肥大化を防ぐことが出来ます。
しかし、後者には、単に話を聞くだけでは何の解決にもなりません。
児童相談所ですら、なかなか家庭に入っていけない状態で、その相談窓口は本当に機能していると言えるでしょうか。
家庭の事情や個人情報保護を重視しすぎた結果、SOSを取りこぼし、大切な命が奪われるのでは意味がありません。
早急に、一歩踏み込める制度やシステムの構築が必要ではないかと思います。
ダブルケアをしていると、どっちの制度についても思う部分がないわけではありません。
しかし、ケアが必要な方の生活を支える、という部分では一致しているし、お互いに参考にできる部分も多いのではないかと思っています。
介護も、育児も、悩みの芽が小さな内に摘むことが出来る環境になったらいいなと思っています。
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