寝たきりには在宅では無理。
施設の方がいい。
と思われている方も多い思います。
実際に、医師から、在宅ではなく施設を勧められた方もいるかもしれません。
実際、どうなのか…?
終末期以外での寝たきりの在宅介護はあまり実例がありません。
その日常を知って欲しいなと思い、今回の記事を書くことにしました。
在宅介護を検討している方の参考になれば幸いです。
はじめに
私は、在宅介護をオススメするつもりも、絶対にやめた方いいなんて言うつもりもありません。
在宅を選んでもいいし、施設を選んでもいい。
誰にでも共通の正解なんてありません。
要介護者との関係性
育ってきた背景
現在の環境
全てが一人ひとり違います。
100人の要介護者がいれば、100通りの介護のやり方がある。
あの人は在宅で見てるから私も家で見ないといけないのかな…と無理する必要もなければ、
逆に、私のように、一般的には施設に行くケースでも自宅で見たっていいんです。
在宅でも施設でも、大変なことや我慢が必要なこと、耐えなければいけないことはそれぞれあります。
感情や一般論に左右されず、それぞれのメリット・デメリットを知った上で、自分の状況に当てはめて考えることが大切です。
ケアプラン
訪問看護
滞在時間は30分程。
日々の全身状態の管理、
摘便、陰部の洗浄がメインです。
訪問診療の医師と連携し、きめ細やかな対応をしてくれます。
24時間連絡を取ることが出来ます。
必要に応じて予定外の訪問もしてくれます。
訪問診療
滞在時間は15分程。
胃ろうのチューブを交換してくれます。
定期的な採血で関節リウマチの経過観察をしてくれています。
訪問看護師と連携し、指示・処方をしてくれます。
各種ワクチンも対応してくれます。
デイサービス
家では基本的に寝ているので、定期的に離床させることと、入浴がメインです。
看護師が常駐している為、胃ろうや痰吸引、発熱時の対応も可能です。
ショートステイもこのデイで可能な為、慣れた場所・顔なじみのスタッフで安心してお任せできます。
訪問リハビリ
時間は45分程度。
ベッド上で行い、後半20分程は支えられながらベッドサイドで座位を保ちます。
特に冬は、関節が固くなりやすく、オムツ替えや移乗に支障をきたすので定期的なリハビリが欠かせません。
訪問薬剤師
往診の医師が、処方箋を薬局へ転送。
後日、自宅へ処方薬や栄養剤を届けてくれます。
薬の飲み方の相談や、重複する薬がないかなどをチェックしてくれるので助かっています。
訪問介護(利用無し)
尿道カテーテルによりオムツ替えの頻度が少ないこと、また、胃ろうは医療行為でヘルパーさんにはお願いできません。身体的な介護が少ないので、利用していません。
スケジュール
一つ一つの介助内容にはそれほど時間はかかりませんが、一定の経過観察が必要な時間があるため、拘束時間を含めて記載しています。
要介護5のやること
母の場合、現時点で夜間の介護はありません。
しかし、異変時にすぐ対応できるよう、介護ベッドの隣に布団を敷いて娘と寝ています。
いくら日中はデイサービスなどが利用できるとは言え、睡眠を十分にとることができなければ、疲労は蓄積され、心に余裕がなくなってイライラしやすくなったり、精神的に苦しくなっていくこともあります。
『体力には自信がある!』
というだけでは乗り越えられないのが在宅介護です。
『オムツ替え』と一言で言っても、状態によって介護者の負担は異なります。
【排泄介助がどの程度必要か】
も在宅介護においては大事なポイントです。
胃瘻の栄養剤のタイプによって注入時間が異なります。
母が利用しているのは、ラコールの半固形です。
液体に比べて、大幅に注入時間が短いのが特徴です。
嘔吐しやすい母にとって、半固形は嘔吐反応が少ないというメリットもあります。
但し、栄養剤の種類は、本人の身体状況から医師が判断しますので、介護者の都合や希望で選択することは出来ません。
【栄養剤の種類】や
【注入に必要な時間】
も在宅介護が可能かの判断材料になります。
日々適切なケアをしていれば(←ここ大事!)、大きな炎症を起こすことは少ないと思います。
痰は感染症・肺炎・窒息などの原因にもなるため、いつでも吸引出来る体制・準備が必要です。
ただ、痰の吸引は、在宅介護では切っても切り離せない医療行為であると同時に、一番抵抗を感じる医療行為でもあると思います。
必要な医療行為を自分が出来るか、は在宅介護において大事なポイントです。
口腔内を清潔に保つことは高齢者の健康管理においてはとても重要なことです。
食事は胃瘻のみで、経口摂取がないので、口の中がひどく汚れることはあまりありません。
よって、家ではウエットティッシュタイプのもので口の中を拭くだけです。
痰が多い時は、口腔内も汚れやすい傾向があるので、気を付けて観察するようにしています。
胃瘻部のケアや痰吸引の時に一緒に済ませています。
デイサービスでは、歯ブラシなどを使用して丁寧にケアしてくれています。
毎月の費用は?
世帯分離により、15,000円の限度額認定を受けています。(介護保険分)
介護保険サービスの料金の内、15,000円を超えた分は、後日自治体から返金されます。
よって、実質毎月の費用は、
15,000円+自費分
ということになります。
母は、看護小規模多機能型居宅介護(通称:看多機)を利用しています。
看多機の特徴は、料金が定額制だということです。(介護度による/自費分別途)
毎月の費用が明瞭で、予算も立てやすいです。
また、母は寝たきりになったことで、
特別障害者手当を受け、毎月27,000円が支給されています。
自費分もこの手当から賄うことが出来ています。
仕事は出来る?
寝たきりの在宅介護の場合、介護サービスを利用したとしても、フルタイムで仕事をすることは難しいです。
実際、私は、パートすら見つけられませんでした。
介護をするためには
仕事をセーブしなければならない。
でも生きるためには
仕事をしなければならない。
稼がなければ
介護サービスも利用できない。
という悪循環に陥りやすいです。
介護保険制度によって、サービス料金の負担を減らすことは出来ても、介護を担う人の収入そのものを確実にカバーできる制度はありません。
介護休業制度もありますが、本当に機能しているでしょうか。
知っていても結局は利用できない状態になっている会社、
そもそも制度すら知らない会社もあるでしょう。
介護による社会参加が出来ないことは、介護における大きな問題点だと思います。
介護以外のこと
家事全般の取捨選択、そして、家族で家事を分担することが必須だと思います。
介護には直接関われなくても、ごみ捨てや掃除・洗濯などを家族がやってくれるだけでも助かります。
私は、洗濯物は乾燥機を利用し、買い物はネットスーパーや宅配サービスを利用するようにしています。
在宅介護だと、排泄の失敗からシーツや洋服の洗濯回数が増えることもあるので、天気や時間を気にしなくていい乾燥機にはかなり助けられています。
子育への影響
子供の年齢や状況により違うと思いますが…
娘が幼稚園の時は、デイサービスと幼稚園の送迎時間が重ならないように調整するのが大変でした。
我が家の場合は、行き渋りがあったので、毎朝門まで付き添ったり、授業も一緒に受けたりしていたので、介護との調整が本当に難しかったです。
その点、不登校になると調整の必要はなくなりラクになったと思いますが、毎日のご飯の準備や娘の心のサポートなどが増えました。
夕方の習い事への送迎とデイの帰宅時間が被ったり、要護者のケアが重なったりすると大変💦
土日や長期休暇でも、子供のやりたいことやお出かけを我慢させてしまうこともあります。
子供のやりたい!行きたい!を叶えてあげられない状況が心苦しくなることもありました。
続けるコツ
要介護者の要望通りに動いていると、介護者である自分の生活が崩壊してしまいます。
大切な人であればあるほど、
身近な存在であればあるほど、
出来る限り希望を叶えてあげたい!
と思うところではありますが、それが知らぬうちに自分自身を追い込んでしまう、ということもあります。
プロにお願い出来ることはお願いして、介護から離れる時間を積極的にとっていくことが大切です。
休む時は休む、介護のことは考えない。
そんな割り切った付き合い方が在宅介護を継続するポイントです。
完璧じゃなくていい
ほとんどの人が未経験で在宅介護を始めると思います。
仕事や育児、家事をしながらの介護です。
最初から、全てを完璧にこなそうとすることだけはやめてください。
これは本当に!!!!
出来る範囲で、出来ることをやっていれば十分です。
少しずつ、やり方やペース配分がわかってきます。
在宅介護は、要介護者と介護者の関係性や、家族構成によっては、家庭崩壊を招くことさえあります。
大切な家族だからこそ、離れていた方がうまくいくこともあります。
在宅で介護することが、必ずしも幸せとは限らないのです。
親子とはいえ、家族とはいえ、お互いに思いやる気持ちや境界線をしっかり張ることが大切です。
介護が始まる前から、介護者と要介護者の関係性が微妙だった場合、施設を検討する方が良いと私は思います。
終の住処
最期は住み慣れた家で…と誰しもが思うことだと思います。
しかし、みんながみんな、ポックリ逝けるわけではなく、【最期】が訪れるまでには、必ず介護期間があることを忘れてはいけません。
この介護期間を抜きにして、在宅で迎える最期はないわけです。
介護期間は何年かかるかわかりません。
10年以上続く方もいます。
介護期間と同じだけ、介護者の人生も過ぎてゆくのです。
自宅で家族と暮らしたい、という要介護者の意向があったとしても、それだけを尊重して在宅介護を始めることだけはしないで欲しいと思います。
【在宅介護】と言っても、要介護5の寝たきり高齢者と、動ける認知症の高齢者とでは対応が全く異なります。
これまでに述べたことは、寝たきりだからこそ継続できている部分が大きいです。
認知症による徘徊や、暴言、などがあったら、私も今のような在宅介護は無理だったと思います。
症状は、年月と共に進行、変化します。
あんなに口が悪かった人がこんなに穏やかになるなんて…ということもあれば、
穏やかだったのに、暴力的になってしまった…ということもあります。
年月を経て、お互いの関係性や感情が変化することもあるでしょう。
家庭の状況も、変化するでしょう。
要介護者・介護者それぞれの状態、お互いの関係性の変化に応じて、より良い選択をしていければ良いのかなと思います。
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